読書感想「キネマの神様」☆☆☆☆☆

 

キネマの神様 (文春文庫)

キネマの神様 (文春文庫)

 

 無職の娘とダメな父。ふたりに奇跡が舞い降りた! 39歳独身の歩は突然会社を辞めるが、折しも趣味は映画とギャンブルという父が倒れ、しかも多額の借金が発覚した。 ある日、父が雑誌「映友」に歩の文章を投稿したのをきっかけに歩は編集部に採用され、ひょんなことから父の映画ブログをスタートさせることになった。〈ゴウ〉のハンドルネームで父が書くコラムは思いがけず好評を博し、借金とギャンブル依存から抜け出せそうになるが、ある時〈ローズ・バッド〉を名乗る覗の人物に反論されて……。 〝映画の神様〟が壊れかけた家族を救う、奇跡の物語。

 正月のイオンで5時間くらい時間をつぶさないといけない事情があって、「正月からあんまり暗い話を読みたくないな」と思って何となく選んで持って行った本でした。

なんかメンタルが弱ってたのか、えらく感動してしまい、イオンのスタバで不覚にも落涙しちゃいました。

 

ストーリーとしては、まあおとぎ話ですよね。

「いや、そんなことあり得ないでしょ。」とか「リアルじゃない」と言い出したら、そりゃそうごもっともなんですけど、そこを言っても仕方ないというか。

だからこそ「神様」の話なんだし、映画「フィールド・オブ・ドリームス」が取り上げられてるのも、そういう暗示なわけでしょう。

 

ただ、おとぎ話にだって、面白いおとぎ話とつまんないおとぎ話、つまり単なるリアリティの無いご都合主義と、上質のファンタジーがあるわけです。

この小説は、根底に映画に対する愛があって、映画の設定・ストーリーを借景のように使いながら、父と子の物語、危機(死)と回復(再生)の物語を重層的に描くことに成功してるので、感動的なファンタジーになり得てるんだと思います。

 

正月から良い小説を読めました。

映画好きで優しい物語を欲している人におすすめです。