本の目利き二人の議論沸騰し、迷い、悩み、選び抜かれたとっておきのお薦め短篇12篇。半村良「となりの宇宙人」、黒井千次「冷たい仕事」、小松左京「むかしばなし」、城山三郎「隠し芸の男」、吉村昭「少女架刑」、吉行淳之介「あしたの夕刊」、山口瞳「穴」、多岐川恭「網」、戸板康二「少年探偵」など、意外な作家の意外な逸品、胸に残る名作をお楽しみ下さい。文庫オリジナル。
書き手としても読み手としても手練の達人お二人による短篇小説アンソロジー。
収録作は
- となりの宇宙人(半村良)
- 冷たい仕事(黒井千次)
- むかしばなし(小松左京)
- 隠し芸の男(城山三郎)
- 少女架刑(吉村昭)
- あしたの夕刊(吉行淳之介)
- 穴―考える人たち(山口瞳)
- 網(多岐川恭)
- 少年探偵(戸板康二)
- 誤訳(松本清張)
- 考える人(井上靖)
- 鬼(円地文子)
普通、短篇小説の良さというと、限られた枚数の中で選ばれた研ぎ澄まされた言葉の切れ味みたいな、鋭角な味わいだと思いますが、ここに収められた短篇小説は、切れ味というよりも、不思議な、変な味わいのものばかりです。
「こんな作家がこんな短篇を」というコンセプトらしいのですが、特に吉村昭は「天狗騒乱」みたいな硬派な歴史小説のイメージがあったので、まさか少女を主人公とした、しかもこんな設定の小説を書いてるとは。びっくりしました。
城山三郎の「隠し芸の男」も、「45歳でやっと課長になった銀行員が新年会で課員に隠し芸を披露しようとしたが…」という内容で、まあ城山三郎らしい経済小説というか財界小説といえばそうなんだけど、なんとも変な読後感の小説です。
どれも各作家の代表作でもないですが、短篇小説のアンソロジーを編もうとしてこのセレクションというのは、編者お二人の読書歴の幅広さ・奥深さは舌を巻くしかないです。
この短篇集に無ければどれもまず読むことは無かったと思いますが、読めて良かったです。小説を読むことが好きな人にはお勧めの一冊です。