札幌の歓楽街ススキノで便利屋をなりわいにする「俺」は、いつものようにバーの扉をあけたが…今夜待っていたのは大学の後輩。同棲している彼女が戻ってこないという。どうせ大したことあるまいと思いながら引き受けた相談事は、いつのまにか怪しげな殺人事件に発展して…ヤクザに脅されても見栄をはり、女に騙されても愛想は忘れない。真相を求め「俺」は街を走り回る。面白さがクセになる新感覚ハードボイルド登場。
いつものバーで、いつものように酒を呑んでいた「俺」は、見知らぬ女から、電話で奇妙な依頼を受けた。伝言を届け相手の反応を観察してほしいという。疑問を感じながらも依頼を果したのだが、その帰り道、何者かによって殺されそうになった。そして、ひとり調査を続けた「俺」が知ったのは依頼人と同じ名前の女が、地上げ放火ですでに殺されていたことだった。
大泉洋主演映画「探偵はBARにいる」 の原作が「バーにかかってきた電話」で、そのシリーズ第一作が「探偵はバーにいる」で、多少、ややこしい。
ブックオフで2作そろってたので、購入。「バーにいる」から読み始めました。
第一作「バーにいる」も面白かったですけど第2作「かかってきた電話」は素晴らしいですね。
軽妙で、かつ芯の通った「俺」の描写、「俺」が振り回される事件の展開とその意外な真相、親友の空手使いや腐れ縁のヤクザ、謎めいた美女など登場人物も魅力的で。
解説子が「初期の最高傑作」というのも分かります。
ただ「俺」は大泉さんとはちょっとイメージが違うかな。ダブルのスーツを愛用とのことなので、もう少しでっぷりした感じだと思う。じゃあ誰、と言われると困りますが。
この本を読んでいて、なんとなく「七帝柔道記」を思い出しました。
「七帝柔道」という寝技中心の柔道に憧れ、二浪の末、北海道大学に入学した。しかし、柔道部はかつて誇った栄光から遠ざかり、大会でも最下位を続けるどん底の状態だった。他の一般学生が恋に趣味に大学生活を満喫するなか、ひたすら寝技だけをこなす毎日。偏差値だけで生きてきた頭でっかちの少年たちが、プライドをずたずたに破壊され、「強さ」という新たな世界で己の限界に挑んでいく。悩み、苦しみ、悲しみ、泣き、そして笑う。唯一の支えは、共に闘う仲間たちだった。地獄のような極限の練習に耐えながら、少年たちは少しずつ青年へと成長していく―。
もちろん札幌が舞台、というのが直接的な理由ですけど、それだけじゃなくて、雪に埋もれた町での男同士の友情とか、割に合わないのに損得抜きでの苦闘とか、読後感のほろ苦さとか。
「七帝」の作者の増田俊也さんはスペンサーシリーズの大ファンとのことですが、あれも、しばしば雪に埋もれるボストンの町と、スペンサーとホークの友情とか、採算度外視のスペンサー的探偵稼業とか、ちょっと似てるとこもありますね。
シリーズはまだまだ続巻があるようなので、立て続けに読むのは少ししんどいですけど、ぼちぼち続読していこうと思います。